昨日、日亜化学と中村修二氏(カリフォルニア大サンタバーバラ校教授)が争っていた青色発光ダイオードの発明対価をめぐる訴訟で和解が成立した。発明対価約6億円を含む約8億4000万円。・・・一審の約200億円に比べて、かなり低い和解となった。中村教授自身は満足ではないらしいけど、弁護士のアドバイスを受け和解を受け入れたという。この金額が高いのか安いのかは、報道からはよく分からない。しかし、これだけはいえる。・・・「企業の社会的役割が変化した」ということ。
アメリカには、終身雇用も年功序列賃金もない。企業の成長は株主のためで、従業員はあくまでも個人の成功を目標にする。そのため、アメリカンドリームといわれる大成功をおさめる少数の勝ち組が生まれる。それが大学教授や学生でも自由に起業することができ、そして有望なベンチャー企業には積極的な投資が集まる風土がある。だから、少数の勝ち組が起業し、新しい産業と雇用を生み出すことで社会の豊かさを実現する。もちろん、いろいろな社会的な歪みや矛盾はあるけど。
これに対して日本はどうか?
いままで日本の企業は、社会福祉の一翼を担ってきた。その実例が厚生年金の雇用者一部負担。だから、新卒採用の情報にも「福利厚生」という項目で、社会保険を完備していることを謳う。さらに、もっと無形の社会福祉項目がある。終身雇用、年功序列賃金だ。このふたつがあれば、「個人の経済的な自己実現」=「企業の成長・安定」という、労働者と企業との間に共通意識が生まれる。
つまり、個人が頑張って働けば企業が成長し、給料が増え、老後も保障される。逆に、個人がたいして役に立たなくても、それなりに給料が増え、老後も保障される。植木等じゃないけど、サラリーマンが気楽な稼業といわれたゆえんだ。・・・この先には、企業が成長すれば、雇用が増え、社会全体が発展するという思想がある。アメリカのように爆発的に成功する個人は少ないけど、社会全体が豊かになるという思想。・・・これを皮肉って、「日本はもっとも成功した社会主義国」といういい方もあった。
中村教授の発明のような場合も、終身雇用の元では企業が成長することで、出世や昇級などの対価を得て、豊かな老後を保障されれば我慢できたはずだ。同時に社員全員が安定し、雇用の拡大にもつながる・・・。しかし、日本の企業や経済風土、学術風土には有能な人材を引き留めておく魅力を失い、頭脳流失が続いている。
さらに、日亜化学がどうなのか知らないけど、昨今、日本の企業は終身雇用、年功序列賃金の御旗を捨てはじめた。大量リストラにより終身雇用は崩れ、能力給が導入されはじめた。さらに厚生年金未払いや脱会する企業が増え、企業が担ってきた社会福祉機能は崩壊しつつある。
日本でも「勝ち組/負け組」という二極化が進んでいるといわれているけど、本質的にはアメリカ的な二極化ではない。その是非も分からない。なぜなら、日本の経済制度や環境は、ベンチャー企業を興せる風土ではないからだ。一部の勝ち組には、できることなら日本国内で新たな産業と雇用を生み出す投資をして欲しい。しかし、日本の個人投資家も銀行も、ベンチャー企業への投資は消極的で、中小企業にはとても冷たい。
中途半端なジャパニーズドリームでは、社会的な成長を生み出す原動力にはならない。企業が社会的役割を後退させ、新たな担い手の誕生を許さない中途半端さ・・・。日本の「勝ち組」「負け組」という二極化がこのまま進むのであれば、中村教授あたりが200億円くらいの対価を得て、そうした成功者が次々と生まれ、新たな投資に回して欲しいところなのだが・・・。
