山のラーメン入門



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しょう油だ、味噌だ、塩だ、

豚骨がどうの、煮干しがどうの、節がどうの、

やれ、細麺だ、太麺だ、縮れ麺だのと、そんなことはどうでもよろしい。

とにかく山で食べるラーメンはこうだ!

これを読めば、キミも山のラーメン通になれる。

※ここに書かれた「市販の生ラーメン」とは、スーパーなどでふつうに売られているごくふつうの「生麺と即席スープ」のセットを指します。最近は有名ラーメン店の協力の下、それなりに美味しく値段も高いプレミア麺が売られていますが、そういう特別な生麺のことではありません。

下界のラーメン   山のラーメン
豚骨や昆布、鰹節、煮干し、場合によっては鯖節など特別な食材を使い、野菜などをふんだんに入れて、何時間もかけて、それぞれのお店が苦労を重ねて美味しいスープを作っている。それぞれお店特有のバランスのとれたうま味成分がふんだんに溶けているので、やはり美味しいに違いない。 スープ 山小屋にはダシを取るような十分な材料がない、さらには燃料(主にLPガス)も貴重だし、そもそも料理人がいない。だから、美味しいスープを作ろうなどという発想自体がない。つまり、スープは、お湯そのものということ。その上、そのお湯のもとである水にしても、たいていの山小屋は不自由している。
「しょう油味」「みそ味」「塩味」、あるいは唐辛子たっぷりの「激辛」など、ラーメンの味の決手というか、種類を決めるのがこのタレ。下界のラーメン店は、文字通りお店の命運をかけるように美味しい秘伝のタレを独自に作っている。テレビの取材をさんざん受けながらも、これだけは秘伝ですと、さもありがたいタレであるかのように見せるなど、絶好のPRネタでもある。 タレ はっきりいって、市販の生ラーメンについているタレそのもの。お湯に特別な味があるわけではないので、山のラーメンの味付けは、すべてこのインスタントのタレをどれだけのお湯で薄めるかによって決まるといっても過言ではない。そして往々にして、ぬるいお湯が使われたりする・・・。市販の生ラーメンでありながら、なぜか「しょうゆ味」しかない。
有名店は麺の水分含有率や太さ、手揉みによる縮れの有無、鹹水を使う使わないなど、細かな点までこだわり、専用の麺を製麺所に特注していることが多い。さらにこだわると、自家製麺を使っているお店さえある。これを、しっかりした料理人が茹でるのだから、いつも安定した茹で上がりで、美味しい麺が食べられる。 どうということはないが、市販の生ラーメンなので、どこで食べても中太の縮れ麺、あるいは中太のストレート麺。ふもとで購入して運び上げるのだから、もっと地方色があってもいいと思うのだが、どこで食べても差がない。ちなみに、自家製麺という山小屋は、ウワサすら聞いたことがない。
通常のお店だけでなく、それなりの有名店でも、何らかの化学調味料(うま味調味料)を使うのが普通らしい。その証拠に、化学調味料を一切使っていないことをあえて売り物にしているお店があるくらいだ。これをラーメンマニアたちは無化調と呼んでいる。ちなみに、化学調味料の業界は、イメージアップのために「うまみ調味料」と呼ぶようにしている。 化学調味料 山のラーメンで、それなりに食べられるものは、間違いなく化学調味料(うま味調味料)が入っていると思われる。スープが「お湯」そのものであることが普通なので、化学調味料が入っていることは、とてもありがたいことだと思う。ある意味、とっても贅沢なことだ。場所によっては、ヘリコプターで運ばれた高価なものかも知れない。
それこそ千差万別、いろいろな具がある。だからといって、必要以上に豪華に走ることもない。また、まったくルールがないわけではなく、ご当地ラーメンとして一定のルールが守られている。しかし、ご当地の特産品や名産品が必ずしも使われるわけではなく、ある意味、料理人の創意工夫が感じられる。さらに、最低限、ラーメンと呼ぶにふさわしいイメージは守られている。 ラーメンマニアにいわせると、きっと、東京ラーメンの簡易版とでもいうような具なのだと思う。「山菜そば」があるのだから、「山菜ラーメン」を出してもいいような気もするが、めったにお目にかかったことがない。こだわりがないようでいて、どの山小屋もみんなほとんど共通なので、きっとなにか、関係者だけが知っている秘密のこだわりがあるような気もする。
下界のラーメンでも、あまり「水」にこだわったお店は多くはないらしい。まれに、どこそこの名水を毎日汲みにいっているとか、どこそこの井戸水を使っているというのを売り物にしているお店がある程度。ラーメンマニアのホームページでも雑誌でも、とくにラーメンマニアが騒ぐこともないようなので、水そのものが重要なファクターではないのかも知れない? 水道水をそのまま使っているとは思わないが・・・。 どの山でも、美味しい「水」が溢れているわけではない。登山口あたりの山小屋には水道が整備されている場合もあるし、きれいな沢水を引いているところもあるだろうが、滅多に美味しい水を売り物にしている小屋はない。むしろ山は水に恵まれないところで、稜線の小屋に至っては、美味しい水どころか、往々にして「雨水」であったりする。その雨水すら、季節によっては不足することがある。
ラーメンマニアといえども、お店の丼までは食べないので、特別なこだわりはないのかも知れない。しかし、こだわりのあるお店は、それなりに高級そうな丼を使っている。のれん分けなどにより、チェーン店化したお店は、店名入りの特注品を使っていることがある。 山小屋ではラーメンのないところが多い。しかし、「そば」や「うどん」はあるので、なんとなく和風の丼が使われている。しかし、ラーメンを出す山小屋は、ちゃんと中華あるいはラーメンっぽい丼で出てくる。味はともかく、丼に対するこだわりはあるようだ。
マスコミ以上の情報量を誇るラーメンマニアのホームページや、いろいろなグルメ雑誌、あるいは書籍を探しても、ラーメン店の箸に対する「こだわり」についての記事は、ほとんどお目にかかったことがない。たぶん、割り箸が当たり前で、とくにどうでもいいことなのだろう。 山小屋でもラーメン、そば、うどんを頼むとたいていは「割り箸」が出てくる。しかし、安い塗り箸が使われているところもあり、ラーメンなどの麺類を食べるのに苦労することがある。箸を洗う水に不自由しないふもとの小屋に多いのは、なにか矛盾した感じがする。
下界では、「ご当地ラーメン」どころか、ご当人ラーメンという個人カリスマ的ラーメンさえ、まことしやかに云々される状態になっている。ラーメンの味がこだわりの対象であるのはいいとして、およそ商売人とは思えぬ親父の身勝手、偏屈までをも、その店の味であるというマニアの言葉は理解に苦しむ。 親父 山小屋の親父にも奇人変人、偏屈、頑固というか、傍若無人というか、いわゆるクソ親父はたくさんいる。しかし、ラーメンを作っているのは、たいてい、ただのアルバイトのお兄ちゃん、お姉ちゃんであって、とくにラーメンを作るプロではないし、美味しいラーメンを作るための何のこだわりももっていない。
マスコミ戦略が当たった旬のラーメン店、あるいは相当数の常連客をつかんだラーメン店の場合、ただ腹が減ったというだけではお客になれない。ガイドブックやホームページのプリントアウトを握りしめたミーハー客の行列に我慢して並び、それなりの時間を費やさなければならない。場合によっては、くそ親父のご機嫌をとりながら、恐る恐る食べる必要がある。すごいところに至っては、呪文を唱えないとラーメンすら注文できないらしい。 数十分待ちの行列どころか、何時間も行列のように歩いて登ってくる、あるいは冷凍マグロ同然の扱いを受けながら山小屋に泊まってまで登ってくる・・・この客たちの体力と汗臭さだけは、下界のどんな有名店にも負けることはない。ガイドブック片手に集まるミーハーぶりも同様で、下界と遜色のないミーハー客が揃っている。ただし、彼ら登山者の本来の目的はラーメンではなく、あくまでも百名山だ。
牛丼1杯280円という時代になり、やや割高感がでてきたが、いまだラーメンは庶民的な食べ物である。ラーメン1杯に費やされた食材と手間を考えると、有名店のラーメンはみな美味しいし、それほど高いとは思えない。しかし、ラーメンの原価率は予想以上に高く、薄利多売でなければ成り立たないという。だから、マスコミの力を使ってでも回転率がほしくなるのだろう。 値段 ラーメンに限らず、ものの値段を高いと思うか安いと思うかは、個人の考え方や懐具合、満足度や腹の空き具合など、様々な要素で決まる。その意味では、「食べられること自体がありがたい」という状況では、高い安いをどうこういっても始まらない。しかし、ついでにいえば、山小屋のラーメンに占める輸送費は、かなり高いと思われ、原価率も高いと思う。
テレビ番組や雑誌などで紹介され、一躍、行列店に成り上がるラーメン店は多い。実際、食べてみると確かに美味しい。しかし、マスコミへの露出が減った途端、行列はなくなり普通のラーメン店に戻ってしまう、そういうお店がよくあるらしい。最近は、情報の量・質に優れたラーメン専門サイトの影響力も高まり、ラーメン店も広報宣伝を意識しないと生き残れないようだ。 マスコミ 山は動かないものの代名詞として使われるほど、動きもしないし逃げもしない。だから百名山であれば、お客は途切れることがない。一方、環境問題の高まりにあわせ、屎尿問題・ゴミ問題、さらには不法投棄問題などで山小屋もニュースで取り上げられることが増えた。しかし、山小屋のラーメンなど、誰も気にもかけないし、取材もしない。このマスコミの姿勢は正しい。

  

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